EOS3 / 三脚+雲台ブレテスト
EOS3+EF70-200/2.8LUSM+×2テレコンおよびEOS3+EF35-350/3.5-5.6LUSMによる
三脚+雲台のカメラブレテストレポート
カメラ雑誌「CAPA」2002年10月号の「紅葉撮影機材テスト&ガイド」特集のなかの「三脚+雲台ブレテスト」記事の検証テスト
                                                                著者:工藤智道氏

R0:2002.10.10    R1:2002.10.11  
R2:2002.10.16  R3:2002.11.12  
文責  天平(あまのたいら、写友名)/大竹良秀
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 カメラ雑誌CAPA2002年10月号の「紅葉撮影機材テスト&ガイド」特集のなかの 「三脚+雲台ブレテスト」記事(以下ではこの記事と表現します)の一部分に大きな疑問を感じましたので、筆者なりの検証テストを行っています。 その結果を公表し、世の写真愛好家の皆様のご参考に供します。

1.この記事で疑問に感じたこと
 この記事は全体としては的を射たものと思いましたが、次の3点に大きな疑問を感じました。

 1)この記事の10ページの「理想的なのは、とにかく頑丈で重い三脚」との記述。
 2)12ページに、1/2秒、1秒、2秒の3段階のシャッタ速度で・・撮影したある。
 3)この3段階のみのシャッタスピードによるテスト結果から、
    「どの三脚もブレはほとんどない、といっていいレベル。」と記している。

 1)についての疑問は、筆者が、F5、EOS−1N、α−9、R7+MD、R8+MDの重量級ボデーによりCD−ROM「絶景をブレで逃さないために」PT01の出版のために行ったカメラブレテストで、「このテストからは、重くて丈夫な三脚ほどカメラブレが発生しにくいとは一概に言い切れない」との結論を得ていたこと、
 2)と3)についての疑問は、同じテストで、最もカメラブレが発生し易いシャッタスピードは、使用したほとんど全てのボデー、レンズ、三脚、雲台の組合せにおいて1/4秒〜1/60秒であったということと、このときの一連のテストの初期の段階で、1秒や1/2秒では比較的カメラブレが発生しにくいことがわかったため、テストの作業効率上1/2秒以下をテスト範囲から外したという経験があること 
にもとづいています。
 この記事のテストの前提にしている「紅葉撮影で300ミリや400ミリの望遠レンズを使った場合」では、このテストの3段階の他のシャッタスピードでの撮影も多いはずですから、それらのシャッタスピードでのテストも行った上で結論を出すべきではないか とも思いました。

 中でも3)の記述は、読者に「テストしたどの三脚もEOS3+EF100−400/4.5−5.6LISUSM との組合せによる400ミリ超望遠撮影ではブレの問題は少ない」 と解釈されかねない、 このように解釈し、三脚と雲台を選択し、実際に撮影したら、ブレた写真しか撮れないのではないか と考えると、筆者には看過することはできないと感じられました。
一応、3)の記述のあとに、「テストはテストである」とか、「実際の撮影では状況次第ではぶれる可能性もないではない」、「レリーズとミラーアップを使った方がよい」とか、「セルフタイマーが効果的」などのもっともな記述が続いてはいますが、筆者は、3)の記述そのものに強い疑問を感じたわけです。

2.検証テストとその結果 
2.1 検証テスト結果の概要
2.1.1 テスト結果


2.1.2 結論
 このテストは当初予定の40%程度しか行っていませんが、このテスト結果からは次のような結論になりそうです
1) EOS3による三脚座付望遠ズームレンズによる300ミリ〜400ミリ超望遠域の撮影(注1)では、テストに使用した三脚と雲台の組合せの大部分で、ミラー通常で、シャッタースピード1/4〜1/30秒では95%以上の確率で無視できないカメラブレが発生する。さらに1/60秒でも発生するケースが多く、三脚と雲台の組合せによっては1/125秒でも発生する。 1秒、1/2秒では1/4〜1/30秒よりは非常に少ないがやはり発生し、1秒のときより1/2秒の方が倍以上の確率で発生する。
2) 横位置撮影よりも縦位置撮影の方がカメラブレが発生しやすい。
3) ミラーアップ撮影では、ほとんどの場合カメラブレは発生しないか、発生しても僅かである。
ただし、
いくつかの組合せではミラーアップ撮影した場合でも無視できないブレが発生しています。これはこれまでの検証テストでの大きな疑問点でした。条件を変えて再テストする予定でしたが、事情により中止しました。 原因として考えられたのは、 ミラーアップとシャッタ切り の間の時間間隔です、これまでの検証テストではこの時間間隔を頭の中で数えた時間で約2秒にしています(注2)。

別の言い方をすれば、次のようになります。
1) EOS3+三脚座付300ミリ、400ミリ望遠ズームレンズによる超望遠撮影では、この検証テストで使用したどの三脚と雲台を使ってもシャッタスピード1/4秒〜1/30秒ではほぼ例外なくカメラブレが発生し、ブレた写真しか撮れない。
1/60秒で撮影した場合でも横位置では30%以上はブレ、縦位置ではほとんどブレる。
2) 他に一脚などを併用しないとすれば(注3)このカメラブレを防ぐには、次のようにして撮影するのが効果的である。
ミラーアップ撮影する(被写体ブレに要注意)。 ただし単純にミラーアップすればよいというわけではなく、ミラーアップとシャッタを切る間に3〜4秒の時間を置かなければ効果が少ない。 この3〜4秒とはミラーアップで生じた機材の振動が減衰するのに必要な時間です。

1/125秒以上、できれば1/180秒以上で撮影する(風景撮影では実際上かなり難しい場合がほとんど?)

・今回の検証テストでは2秒以上長いシャッタースピードのテストはまだ行っておりませんので断言はしかねますが、
1〜数秒のシャッタスピードで撮影するのも効果がありそうです(被写体ブレ、風によるカメラブレに要注意。NDフィルターが必要?)。
3) 書くまでもない(推測による)結論を書きます。
学研のCapa編集者か関係者は、三脚使用時の超望遠撮影時のカメラブレ実験とその結果の記事掲載を企画し、工藤智道氏とテストを実施した。
企画の切っ掛けとなったのは、筆者と家内が共同で実施し、その結果をまとめたCD−ROM「絶景をブレで逃さないために」PT01を100枚ほど、2002年4月12〜14日のフォトエキスポ2002大阪において、主にエキスポ出品者に無償配布したが、Capa編集者か関係者がこのCD-ROMを見た ことであろう。

使用した機材は記事のもので大きな相違はないでしょう。テストしたシャッタースピードは、2秒〜1/250秒ぐらい。もう少し広いかも。その結果、ミラーアップしない場合は、1/4秒〜1/125秒で無視できないカメラブレが発生した。2秒〜1/2秒はほんの僅かにマシだった。 これは多少の差はあれ、三脚が重量級でも比較的軽量級でも同様だった。
Capa編集者は考えた。「これをそのまま発表すると、ミラーアップがついていないカメラは売れなくなるかも知れない。重い丈夫な三脚や雲台も必要ではない。その結果、Capaの大きな収入源のキヤノンや三脚メーカーに迷惑をかけるかも知れない、あるいはクレームがついて広告を減らされるかも知れない。 それを避けるため、テストシャッタースピードを、1/2秒、1秒、2秒の3段階だけでテストしたことで掲載しよう。」 テスター兼著者の工藤智道氏もそれを了承した。

その結果、この記事ができあがり、世のカメラ愛好者・写真愛好者に間違った情報を販売した。

(注1)
この記事では、「三脚座付望遠ズームレンズによる」との表現・制限はありませんが、
・テストに使用しているレンズがEF100−400LISUSMであること
・三脚座なしの一般クラスのズームレンズを使用した場合は、カメラブレの発生状態が変わることが予想されること
から、比較のポイントを明確にするため、このように範囲を限定して検証することにしました。

(注2)
ちなみに筆者が頭の中で数えた時間の誤差は1分あたり3秒以下ですが、読者も試してみてください。かなり正確な
はずです。


(注3)
一脚を併用した場合の効果については筆者は確かめたことがありませんが、過日の重量級ボデーによるカメラブレテ
ストの経験からは、この方法で、「単なる気休め」ではなく「実際にカメラブレ防止効果を出す」にはかなりの工夫
と試写が必要になるであろう と判断しています。


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2.2 テスト環境
2.2.1 使用機材とテスト条件の比較

 
今回の検証テスト(注4)
CAPA 2002年10月号のテスト
ボデー キヤノンEOS3
2002.03 テスト用に購入したAクラス中古品
2002.07 キヤノン森ノ宮カメラ技術センターで「テストに使用するので」と説明し、ミラーショックとECを重点的に点検済
キヤノンEOS3
レンズ EF70-200/2.8L + 2×エクステンダ
EF35-350/3.5-5.6L
EF100-400/4.5-5.6LIS
三脚+雲台
プロフェショナルII + 付属雲台
  同上      + ハスキー3D






G1228MK2  + G1270M


ハスキー3段  + 別売ハスキー3D
  同上      + プロフェショナルII
  同上      + CBH-5
  同上      + PH-273

カルマーニュ630III  + PH-460


ネオカルマーニュ640 + PH-260G
  同上        + PH-273



ザ・プロフェショナルSP+ 付属雲台
プロフェショナルII  + 付属雲台

プロ700DX  + セット雲台
        (プロ700X雲台)




G1228MK2 + G1270M
G1227MK2 + G1371M

ハスキー3段  + 一体型ハスキー3D




HG−613MX + PH-MG65 
ネオカルマーニュ740+ PH-260G
ネオカルマーニュ730+ PH-270G


#443     + 141RC
#444     + 460MG

テスト用被写体
村上色彩技術研究所製レゾリューションチャートA−1型に800−1600本の高精細部分と、過日の重量級ボデーによるカメラブレテスト用被写体の主要部分とを付加したもの。

オリジナルのA−1型チャートの解像度は200−800本でした。また後者を付加したのは、今回のテストの評価基準と過日の重量級ボデーによるテストによるカメラブレテストの評価基準とをできるだけ整合するためです。
CAPAオリジナルブレチャート
シャッタ
スピード
ミラー通常:1、1/2、1/4、1/8、1/15、1/30、1/60、1/125秒
ミラーアップ:1/2、1/4、1/8、1/15秒
横位置・縦位置の両方テスト、 レリーズ使用

1サイクル(ミラー通常・ミラーアップ各1回)のテストを12コマとし、フィルム1本で3サイクルテストするため、シャッタスピード2秒はテスト対象から外しています。

2、1、1/2秒、レリーズ使用

その他については記述が見あたらず





撮影焦点距離 EF70-200/2.8L+2×:約360ミリ
EF35-350/3.5-5.6L:350ミリ
400ミリ
撮影距離
約5メートル
1.8メートル
撮影場所
鉄筋コンクリート8階建てオフィスビル内の仮設スタジオ
コンクリートの床の上に5cm厚OAフロア敷き(表面は5mm厚のカーペット敷き)
検証テスト撮影では、カーペットの影響を極力減らすためにその上にコンクリートブロックを置き、そのブロックに三脚の各脚をのせた。
屋内の固く平らな床の上
(注4)
この検証テストで使用した機材でメーカーあるいは販売代理店等から供与・貸与されたものはありません。

この検証テストでEF100−400LISUSMレンズを使用していないのは手持ちがなかったことと、
それを使えればよりよい検証ができるとは考えましたが、予算もないことでもあり、わざわざ調達せず手元
の上記レンズで代替しても、目的とする検証テストとしては誤りにはならないであろうと判断したためです。

2.2.2 検証テスト関連画像
1.テスト用被写体 今回の検証テスト用被写体のチャート部分全体
2.同上主要部    1.のテスト用被写体の主要部分を拡大した画像
3.仮設スタジオの床の状態 OAフロアの床にブロック敷き
テストケースの大部分はこの状態で撮影
4.同上、カーペット除去 OAフロアのカーペットと、ブロックを外した状態
3.との比較のため、一部の組合せのについてのみ、この状態で撮影

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