2018.08.27. 緊急事態発生! 靴底が剥がれた! 奥穂高岳登山道 ザイテングラート取り付きにて 

08.27. 若いながらすでにベテラン登山家をおもわせる山中祐貴さま(左)、田原大督さま(右)
筆者の登山靴トラブルをレスキューしていただいたときの記念に。


26日横尾山荘での夕食後、談話室にセットされていたパソコンで (この山荘にはwifiがなく、スマフォが使えませんでした) 穂高岳周辺の天気予報をチェックしたら、25日に自宅で見たときの「08.26.-08.31. 穂高岳付近は晴れたり曇ったり」から後退し、「秋雨前線が南下し、連日ガスまたは雨」に変わっていました。写真撮影が主目的でしたので横尾から引き揚げることもチラッと考えましたが、奥穂でのもう一つの予定もあるので と、「横尾−涸沢−北穂−奥穂−岳沢」の縦走予定を「横尾−涸沢−穂高岳山荘−(奥穂往復−)涸沢−横尾」に変更し、穂高岳山荘でお天気待ちをしながら奥穂に登ることにしました。

涸沢小屋から登ること2時間、ザイテングラート取り付きの少し下で左足に違和感を感じ足元を見つめたら、左側ブーツのソール前半が剥がれているではありませんか。 まづいことが起きたな と思いながらもザイテングラート取り付きから少し登ったところでザックをおろし、持っていた予備靴紐で剥がれた部分を結束しましたが、余った部分を切るカッターがありません。 少しでも軽くと思い、僅か80gの10徳ナイフを今回に限って携行品から外していました。 どうしようかとやや困惑しながら周りを見回わせば、少し前にすれ違った若い2人連れパーティが10数m下で休憩中でした。 ひょっとしたらと思い、

Q1 「すみません、ナイフをお持ちでしたら貸していただきたいのですが。」と声をかけてみました。 その答えは、
A1 「ナイフは無いけどハサミならあります。 どうしましたか。」

Q2 剥がれたブーツをお見せし、「予備の靴紐で結びましたが、余った端を切りたいのです。」とハサミをお借りし、端を切りました。
A2 「やばいですね、ソールトラブルは即く下山が基本です。 予備の靴紐を持っていただけマシですが、我々がいま持っている予備靴紐と補修テープを全部あげますので、これでもっと補修し、ここから下りてください。我々は山小屋で働いていたことがあります。山小屋ならいろいろとありますから、トラブル対応も楽なのですが。」(山中さまは槍ヶ岳山荘で、田原さまは笠ヶ岳山荘で働いていたことがあるそうです。)

Q3 (いただいた補修テープで下の写真のように補修しお礼を述べた後、代金をお支払いしようとしたら、いらないとおっしゃり、受け取っていただけませんでした。
  続けて:) 「ここまで来てあと2時間程度で、やりたいことがあるし、おかげさまで上手く補修できたので、せめて奥穂にだけは登って帰りたい。」
A3 それはあなたの判断ですのでこれ以上は言いませんが、我々は「ここから下山しろ」と言いましたよね。 1・2日の間に奥穂近辺で救援ヘリコプターが飛んだら、「あれはきっとあの人だ」と思うことにします(笑)(*)。

Q4 「ありがとうございます。帰ったらここに写真upさせていただきます」と持っていた名刺をお渡しし、下る者・登る者別れをいい、無事を祈りあいました。

そこから、2時間45分かけ15:30に穂高岳山荘にたどりつき、
27・28・29とお天気待ち・眺望待ちで穂高岳山荘に滞留し、29日AM少し明るく・風が弱まるのを見計らってカッパを着、カメラ・水筒・おやつを背に奥穂頂上を往復し、 30日9:45 いただいたテープで靴を再補修し、涸沢にむけ下山開始しました。 30日は横尾泊、 31日11:55小雨の上高地に無事たどり着きました。

3日間の穂高岳山荘滞留中、眺望を得られたのは1・2分間が数回、あとは視界10〜20mのガス・小雨の中でした。

なお筆者のザックは約15kg(うち8kgは撮影機材)、くわえて小柄なため、休憩を入れた所要時間は登山地図記載のコースタイムの1.5〜2倍かかります。

この靴は2006年11月26日大阪市のIBS石井店で購入したものでした。 登山靴の寿命は5年と言われているようですから、極めて長く働いてくれたことになります。 他方購入後約12年間での登山は今回を入れて僅か8回延べ22泊ですので、痛んだと言うより経年による接着剤の劣化が原因のようです。

(*) 2016.09.上旬、このザイテングラートで3件3人の下山中の滑落・死亡事故が発生したそうです。 筆者には「岩道のちょっと険しいが普通のルート」に思えましたが、ただの一歩 気を緩めただけで同様な結果になっていたのでしょう。 だがそれはどこの山道でも、全行程中のどこででも同じことと思います。 (2018.09.22. 記、 2019.09.24.事故発生年訂正/2016 ← 2018)


山中祐貴さま、田原大督さま
あの時は見ず知らずの当方を快くレスキューいただき、またアドバイスいただき、ありがとうございました。 おかげさまで23年振りに奥穂高岳に登頂し、今回の目的(の半分)を果たし、無事帰宅することができました。 重ねて厚く御礼申し上げます。


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2018.09.16.

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MrYamanaka&MrTahara_at_Seitengrat-01-4K.jpg(5.1MB)

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MrYamanaka&MrTahara_at_Seitengrat-02-4K(4.79MB)

ザイテングラート取り付きで、予備の靴紐といただいた修復テープで応急修理した筆者の登山靴

いただいた予備の靴紐と補修テープ(余り)

自宅に帰ったときの登山靴-1

自宅に帰ったときの登山靴-2

自宅に帰ったときの登山靴-3

自宅に帰ったときの登山靴-4  補修靴紐と補修テープを外した状態